街中にある深い静寂 鈴木大拙館
1.禅の声、鈴木大拙
2.鈴木大拙が生まれた金沢で、「禅」の思想に出会える場所
3.日本的な美を表現したモダ二ズム建築
4.厳粛な雰囲気を身に纏った空間
5.街中にある深い静寂
1.禅の声、鈴木大拙
D.T. Suzuki(Daisetz Teitaro Suzuki)として世界で知られる鈴木大拙は金沢が生んだ仏教哲学者。インドから中国を経て、日本に伝えられた「禅」を含んだ仏教思想を分かりやすく海外に伝え広めました。
長期の渡米を通し、「禅」についての著書を英語で執筆、コロンビア大学では教授も務めました。語学が堪能な鈴木大拙は、「禅」をはじめとする仏教思想についての卓越した知識と西洋思想への理解が深かったため、海外でも世界的な仏教哲学者として有名です。
2.鈴木大拙が生まれた金沢で、「禅」の思想に出会える場所
鈴木大拙の考えや足跡を広く国内外の人々に伝えるとともに、来館者自らが思索できる場となっている館内は「展示空間」「学習空間」「思索空間」の3つの空間を回廊で結び、「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」の3つの庭によって構成されています。静寂な雰囲気を生み出す大きなクスノキの古木や朝夕、四季によって彩られる散策路も見どころです。思想空間から眺める「水鏡の庭」は、静寂に包まれた空間で水の音や草木がささやく声に耳を傾けながら、水面をずっと眺めていたくなる私のお気に入りの場所です。ただぼーっと眺めるだけで「禅」の思想に一歩近づけたような気になれますよ。
3.日本的な美を表現したモダ二ズム建築
設計は国際的な建築家の谷口吉生。また、谷口吉生の父である谷口吉郎も建築家であり、そして金沢生まれです。金沢は谷口家にとって縁のある土地ですね。
谷口吉生は、日本的な美を表現したモダ二ズム建築の作り手で、繊細で美しいフォルムの建築に定評があり、多くの美術館や公共建築を手掛けています。
そんな谷口吉生の建築の中で、鈴木大拙館が一番好きだという方もいるほど。私もその内の1人です。鈴木大拙について詳しくなくとも、建築好きの方に一度は訪れていただきたい場所です。
4.厳粛な雰囲気を身に纏った空間
玄関から館内に入ると内部回廊になっており、その空間は幻想的な世界へと誘います。内部回路からは「玄関の庭」が眺められ、さらに先に進むと「展示空間」と「学習空間があります。「展示空間」は、展示された書や写真、著作などから鈴木大拙を”知る”空間。「学習空間」では、鈴木大拙の心や思想を”学ぶ”空間となっています。また、「学習空間」からは対照的な場所となる「露地の庭」を眺めることができます。
「露地の庭」には「マル・サンカク・シカク」の石があり、これらは谷口吉生デザインの御影石の手水鉢です。茶庭や日本庭園の重要な構成要素とされる手水鉢をモダンなデザインで創り上げた谷口吉生らしい作品の一つです。
外部回廊を通って「思索空間」へ向かう途中に、鈴木大拙館の見所の一つである「水鏡の庭」が広がっています。
「水鏡の庭」では、定期的に波紋が発生します。偶然ではない、必然的な波紋により水面は瞬間的に乱れ、また元の静寂へと戻っていきます。日が落ちてライトが灯ると、また昼とは違った雰囲気に。辺りは静寂に包まれ、建物の影が映りこむ水面を一日中ずっと眺めていたい気持ちになります。
「水鏡の庭」は「静寂」と「自由」という鈴木大拙の精神を表した空間で、外部回廊や壁、生け垣などの異なるものによって外部と隔離させるように囲われています。
そこに建つ「思索空間」が、水面に浮かんでいるような感覚にさせてくれます。
「思索空間」の内部は腰をおろして、ゆっくりと四方を眺められるようになっています。ここで腰をおろして過ごすゆっくりと流れる時間は、忙しい日常を忘れさせてくれます。
5.街中にある深い静寂
鈴木大拙館は鑑賞するだけの場ではなく、来館者が鈴木大拙の思想について知り、学び、そして考えることができるように設計されています。
ここで鈴木大拙と出会うことで、そこから得る感動や心の変化が、不思議で大きな世界観を与えてくれます。
忙しい日常を離れ、自分自身を見つめる。そんな心の旅ができそうな「鈴木大拙館」
静寂に包まれた、美しい空間に身を置くだけでも心が洗われるようです。
ぜひ、あなたも「禅」の思想を感じに、訪れてみてはいかがでしょうか?
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